英国誌「The Economist」を読む人

イギリス「エコノミスト誌」を読んでいます。

日中の腐れ縁 Sep 2021

 

 The Economist, Sep 18th 2021

 

Business

Supply chains

Marginal revolution

 

日中の腐れ縁

 

 

今月末、東芝は大連の工場を閉鎖した。この中国北東部に工場を開いてから30年が経っていた。かつてこの工場はグローバル供給網が中国へ進出した象徴的存在だったが、今回の閉鎖によって、今後どのようなサプライチェーンが再形成されていくのだろうか。その答えは、微妙に限界。

 

東芝の大連工場は、アジアにおけるビジネスパターンを大きく変化させた。オープン当初、日本はアジアの貿易および製造業において唯一無二の存在であった。2019年、日本の中間財の取り引きは3,900億ドル(約43兆円)で、韓国および台湾と2位争いをしている。1位は中国、9,350億ドル(約100兆円)と抜きん出ている。

 

 

中国人労働者の時給は、今世紀にはいってから10倍に跳ね上がり、6.20ドル(約782円)になった。依然、日本人労働者の4分の1だとはいえ、タイの労働者の2倍である。ちなみに、中国は2008年までタイと同じ水準にあった。労賃の上昇が十分な理由にならないとしても、中国共産党と先進民主国とのあいだでは、地政学的緊張が高まっている。

 

日本の海外向け直接投資の中国への割合は2012年以来、一貫して減り続けている。また、日本企業が中国と提携している製造業の数は、10年前から成長を止めている。新たな提携先は、インド、インドネシア、タイ、ベトナムなどアジア各地に広がっている。東芝はかつて海外へ拡張した分の穴埋めを、国内50の工場およびベトナム30の工場で行うことにした。日本政府は補助金によってサプライチェーンの国内回帰と多様化をずっとすすめてきた(暗黙裡に中国依存を減らす目的もある)。

 

 

ほかの日本企業も状況は似たりよったりである。沖電気は今月、20年前に開業した深セン市の工場ではプリンタの製造を行わないと発表した。今後はタイおよび日本国内における既存の工場で製造することになる。とはいえ、みなが皆、中国からの離脱を急いでいるわけではない。JETRO日本貿易振興機構)の昨年の調査によると、日本企業の8%が中国との関わりを減らす、または失くすと答えているが、これは他国に対する平均よりも低い数字である。アメリカの玩具メーカーHasbroから韓国のサムスンまで、多くのグローバル企業も同じような算盤をはじいている。東芝自身は大連に第2の工場を共同で所有することにしている。

 

どんなに熱い国家主義者でさえ、世界第2位の経済規模を誇る中国とのつながりを断つことには躊躇するだろう。そんなことをすれば、中国のサプライヤーや製造業との良好な関係が利益を生まなくなってしまう。現在のようなつながりを新たにつくるとなると何年もかかるだろう。企業側がコストの削減や将来の安定供給を強制だと感じてしまう限界にあって、中国はもはや約束の地ではないだろう。