英国誌「The Economist」を読む人

イギリス「エコノミスト誌」を読んでいます。

戦闘間近、アディスアベバ Nov 2021

 

 

The Economist, Nov 4th 2021

 

Middle East & Africa

Ethiopia’s civil war

A battle for the capital looms

 

戦闘間近、アディスアベバ

 

 

このような事態に陥るとは、誰が予想しえたであろう。およそ一年前に内戦がはじまったとき、エチオピア首相Abiy Ahmedはティグレ人民解放戦線(TPLF)を抑える速やかな軍事行動を約束した。ティグレ人民解放戦線(TPLF)とは、ティグレ州を支配する反抗勢力である。連邦軍の基地を攻撃したことに対する裁きが目的だった、と彼は言う。一ヶ月も経たず、アムハラ州の民兵に支援されたエチオピア連邦軍は、北の隣国エリトリア軍とともに、ティグレ州の首都メケレのほとんどを支配下においた。ティグレ人民解放戦線(TPLF)のリーダーは山中へと身を隠し、Abiy首相は勝利を宣言した。

 

その後、ティグレ人民解放戦線(TPLF)は劇的な復帰を果たし、エチオピアの首都であるアディスアベバへの襲撃とアフリカ連合の座を狙うまでになった。ティグレ人民解放戦線(TPLF)のリーダーは、2018年にAbiyによる大規模な反抗によって追放される以前、30年間中央政府を仕切っていた。そして現在、過去にそうであったように南を目指して進軍している。30年前におけるゲリラ団のような熾烈さで。

 

パニックの起こった112日、Abiy首相は国家非常事態を宣言し、一般人にも都市防衛の戦力となるよう促した。アフリカ大陸第2の人口をもつ首都アディスアベバは、戦場に一変するという恐怖にかき乱さている。アメリカはエチオピア国民に荷造りするよう忠告している。

 

 

反乱軍がどれほどのものかは判然としない。最近、アムハラ州のデセとコムボルチャを制したと彼らは言う。両方とも戦略的に重要な街である。それでも、まだ首都アディスアベバから250km以上は離れている。ティグレ人民解放戦線(TPLF)はアファール州に向けて東進しているという。ジブチ共和国につながる道路と線路を支配しようとしているようだ。

 

一方、別の反乱グループであるオロモ解放戦線(OLA)もティグレ人民解放戦線(TPLF)に合流し、首都への道を遮断する準備をしているという。連邦軍はそれに関する情報を把握していない。北方とのコミュニケーションがとれていないため、矛盾する情報を精査する術がない。

 

疑いないことといえば、連邦軍が尻込みしていることぐらいだ。111日、占拠された街の支配が不安定であるという暗黙の了解のもと、政府はティグレ軍がコムボルチャの若者100名あまりを虐殺したと非難した。その前日、アムハラ州の地方政府は外出禁止令を発令して、政府機関を閉鎖した。政府所有の自動車などは戦争に供されることになった。アディスアベバでは住民にガンを持たせて自警団を結成させている。

 

 

非難の応酬がはじまっている。アビィ首相は外国軍がデセにおける戦闘でティグレ人民解放戦線(TPLF)とともに戦っていると主張した。国内の裏切り者が敵と通じていると言う者もいる。アムハラ人の活動家Dawit Mehariは、幻滅したアムハラ人は連邦政府を非難しはじめている、と言う。「政府内の利益団体は政府軍による防衛が失敗することを望んでいる」と彼は言う。

 

民族闘争への恐れが制御不能になるかもしれない。アメリカは反乱軍に進行をやめるよう要請している。アフリカの角におけるアメリカの特使は言う、「われわれはティグレ人民解放戦線(TPLF)によるアディスアベバへのいかなる動きにも反対する」と。アディスアベバのティグレ人は拘束されている。「通りで人がさらわれている」とティグレ系の住民は言う。外国の大使館に庇護を求める人もいるという。オロモとアムハラという2つの多数派グループの衝突も恐れられている。もしオロモ解放戦線(OLA)がアディスアベバへの攻撃を開始したら、両者による戦闘はすぐに勃発するだろう。両者ともに街の支配権を主張している。「リアルかつ明らかな恐怖があります」と首都にいる西洋の外交官は言う。

 

アビィ首相による非常事態宣言により、広範囲にわたる逮捕の権限、勝手な集会や、ティグレ人民解放戦線(TPLF)に加担するようないかなる動きに対して過酷な制限などが課されることになった。そしてまた、軍兵を動員するための下地づくりにもなった。数週間に渡って、アムハラ州政府は若者をバスに乗せて送り込んでいる。彼らの手には、戦闘に備えたマチェット刀やナイフなどが握られている。1031日、首相顧問はテレビで言った、反乱軍を倒すには大量の動員が必要になるだろう、と。

 

 

外国の政府は和平計画を急いでいる。11月2日、アメリカはアフリカ成長機会法(AGOA)のもと、エチオピアからの免税品のアクセスを凍結した。もし交戦グループが交渉に応じない場合は、制裁も視野に入れている。

 

しかし、そのような外交はもはや手遅れかもしれない。アビィ政府はそういった対話を主権に対する侮蔑だと非難している。ティグレ軍が侵攻してくれば、対話をする気も失せるだろう。「犯罪政府とどんな交渉をするというのだ」とティグレ人民解放戦線(TPLF)の司令官Tsadkan Gebretensaeはティグレのテレビで言っている。

 

一年前に戦いがはじまった直後にアビィ軍に合流したエリトリア軍にも問題がある。ティグレ人民解放戦線(TPLF)はエリトリア大統領Issaias Afwerkiにとって宿敵である。19982000年の間に、新たに独立したエリトリアエチオピアと国境争いをしていたが、その後、ティグレ人民解放戦線(TPLF)によって占拠され、およそ10万人の犠牲がでた。7月にティグレ人民解放戦線(TPLF)が再びティグレ州の大半を支配したとき、エリトリアは静観していた。まるで、最後の出番がくるのを待つかのように。「平和的解決はIssaias大統領の望むところではない。なぜなら、ティグレ人民解放戦線(TPLF)を公認することになってしまうからだ」とエチオピア通のアナリストは言う。アディスアベバ攻防戦は、日一日と迫ってきている。