英国誌「The Economist」を読む人

イギリス「エコノミスト誌」を読んでいます。

減りゆくロブスター Oct 2021

 

The Economist, Oct 23rd 2021

 

United States

Warming seas

Considering the lobster

 

減りゆくロブスター

 

 

Steve Trainは、いつも昼1時には仕事を終えていた。米メイン州でロブスターを獲って30年、それほど遠出しなくとも獲物はとれた。ところが今では、夕方4時になっても仕事が終わらない。岸近くにいたロブスターは、いまや冷たく深い海へともぐってしまった。温暖化の影響だ。ロブスター探しはもはや推測ゲームのようになってしまった。「むかしはみんな年中獲っていたんだがな」とMr Trainはメスカル・マルガリータを舐めながら言う。ここはポートランドの古い港に面したレストラン、Luke’s Lobsterだ。彼の船着き場であり、獲ったロブスターを売ったり、週に3~4度はランチをとったりする(ロブスター・ベーコン・レタス・トマト・サンド、ロブスター・ロール、白身魚のフライなど)。ロブスター獲りは単なる仕事ではない。「カルチャーだ」と彼は言う。

 

海の温暖化はロブスターの行動を変えただけでではない。メイン湾全体の生態系を変化させている。過去30年で、メイン湾の海水温は世界の海より99%以上上昇している。専門家は潮流の変化が原因だと言う。南方からの流れが強まり、ラブラドール海流の流入が減っている。ラブラドール海流は、北大西洋から冷たい海水をメイン湾に運んできてくれていた。「海水温の変化が大きいほど、生態系の変化も大きくなります」とメイン湾調査機関の科学者Kathy Millsは言う。温暖化により現在、メイン州において収益の高かった2種、ロブスターとオオノガイ(Soft-shell clam)の生態に変化がおきている。メイン州全体の商業的漁獲高は昨年5億ドル(約550億円)以上だった。しかし、それを今後維持していくためには、柔軟な対応が求められる。そのためには、メイン湾が年々どのように変化していくかを知る必要がある。

 

メイン州東海岸において最大の漁獲量をほこる。それは大量のロブスターによるところが大きい。メイン州における漁獲量は1988年の2,200万ポンドから2016年の1億3,200万ポンドへと6倍に増えている。その最盛期にくらべると、現在は4分の1にまで落ち込んでいる。メイン大学の海洋科学者Bob Steneckは言う、「ふたたび上向くことがあるかもしれません。しかし、そうなるまで何年ものあいだ低迷するでしょう。それが問題です」と。

 

 

Mr Steneckは言う、「研究者らはなぜメイン州の収量が落ちているのかはっきりわかっていません。専門家の多くは今後ともにつづくであろう人口増加が原因だと考えています」と。しかし、ニューイングランド南部でおこっていることを考え、工業関係者は慎重になっている。ロードアイランド州コネチカット州では、過去数十年間にわたりロブスターの収量が減っている。暖水では繁殖がうまくいかず、病気などで死んでしまうからである。

 

州全体においてオオノガイ(Soft-shell clam)の収量は2020年、2番目に多かった。商業的陸揚げの3%を占めていた。しかし、数は減りつつある。暖水に強いミドリガニ(green crab)などの捕食者に食い荒らされてしまっている。ブランズウィックで働くChris Greenは、浜でホンビノス貝(quahog)をとることが多くなったという。ホンビノス貝は高水温でよく育つため、1964年の1万7,265ポンドから2017年は130万ポンド以上にまで収量が増えている。「3年間、ずっと獲ってるよ」とMr Greenは言いながら、また新たなホンビノス貝を砂から探しあてた。10月にしては以上に暑いこの日、彼は半袖Tシャツ姿だった。

 

地元の人たちは、海岸で見られる動物が変わってきていることに気が付いている。タイセイヨウセミクジラはあまり見られなくなった。主食の動物プランクトン、カラヌス・フィンマルキクス(calanus finmarchicus)が温暖化でいなくなってしまったからだ。イカやブラックシーバスなどは高温に強いため、メイン湾でも頻繁に見られるようになった。Portland Lobster Co.では地元のエビを軽く味付けしてサラダで出していたが、メイン湾の漁業が崩壊してからは、サラダで出すのをやめてしまった。総支配人のEthan Morganは「メイン湾のエビに匹敵するものはないよ」と言う。同州のエビは甘く、付け合せに最高だった。今ではフライにしてエビを出している。「ソースをつけないと美味しくないよ」とEthan Morganは言う。

 

生態系は徐々に変化を受け入れ、人間もまた変化に順応していく。Ms Millsは変化が不幸ばかりでないことを知っている。「昔から漁業は変化に対応してきた」と彼女は言う。ロブスターの収入を補うために、Mr Trainは昆布とホタテの養殖をはじめた。Mr Greenも貝の養殖をはじめようと思っている。天然物を補うためでもあり、頼みの綱となっているホンビノス貝が厳冬で全滅したときのためのバックアップでもある。The Portland Lobster Co.では、できるかぎり地物を提供しようとつとめている。しかし、ツノザメのためにメイン湾を訪れる人はほとんどいなくなった。Mr Morganは嘆く、ツノザメの名物料理がお客の口に入らないよ、と。

 

 

即時経済 Oct 2021

 

The Economist, Oct 23rd 2021

 

Leaders

Data and the economy

Instant economies

 

即時経済

 

 

世界経済で何が起こっているのか、誰に聞けばいいのだろう。パンデミックによって、識者たちは糸口を見失っているようだ。だれが原油価格80ドルを予想できたのか。だれがカリフォルニアと中国におけるコンテナ船の待ち行列を想像できたのか。コロナに撹乱された2020年、今年の終わりまで失業率の高止まりがつづくと思われていた。現在、予想以上に物価が高騰しているが、今後ともにインフレ率と賃金が上昇していくのかは不明である。あらゆる計算や理論を駆使しても、エコノミストらは暗闇のなかでヘマをしてしまう。雇用と成長を最大化する政策とはいかなるものか、あまりにも情報に乏しい。

 

今週号で指摘されているように、混迷の時代は夜明けを迎えようとしている。世界経済は「リアルタイム革命(a real-time revolution)」に入ろうとしている。情報の質とスピードが変化している。アマゾンは食料品の配送状況をリアルタイムで把握しており、ネットフリックスはドラマ「イカゲーム(Squid Game)」に釘付けになっている人数を知っている。パンデミックによって政府や中央銀行も、レストランの予約状況の監視やカード払いの追跡をはじめた。経済を迅速かつ正確にモニターする方法は改善されている。そのおかげで、民間部門の意思決定もより良いものになっている。と同時に、政府は介入する気にもなっている。

 

経済データの改善欲求は、なにも新しいことではない。アメリカのGNPは1934年から調査されているが、当時は13ヶ月ものタイムラグがあった。1950年代、若きアラン・グリーンスパンは貨物列車の台数を数えて、鉄鋼の生産量を見積もった。1980年代にウォルマートが供給網の管理をはじめて以来、民間部門ではデータを即時に把握することで、競争を有利にすすめてきた。一方、公的部門はのんびりしていた。エコノミストの追跡する公式データは、GDPや失業率でもわかるとおり、週遅れか月遅れであり、大幅に修正されることも珍しくない。生産性を正確に計測するのには何年もかかっている。少々おおげさな言い方かもしれないが、中央銀行は目をつむって飛行しているようなものだろう。

 

 

データが遅かったり、不正確であったりすると、政策の誤りにつながり、何百もの雇用の喪失もしくは産物にして何兆ドルもの損失を招きかねない。金融危機においても、もしアメリカが景気後退に入った2007年12月にFRBが利下げを行っていれば、あれほどの大惨事には至らなかったかもしれない。実際に利下げが行われたのは、エコノミストらが数字を確認した後の2008年12月であった。インドが何年ものあいだ低成長にあえいでいるのは、経済や銀行に関するデータの信頼性が薄いからである。ECB(ヨーロッパ中央銀行)は2011年、一時的なインフレを見誤って利上げを行ってしまった。その結果、ユーロ圏は景気後退入りしてしまう。現在のBOEイングランド中央銀行)も同じ過ちを犯してしまいかねない。

 

パンデミックは変化のきっかけを与えてくれた。ウイルスやロックダウンへの効果を確認している暇はなかった。各国政府と中央銀行は携帯電話、キャッシュレス決済、飛行機のエンジンなどあらゆるものをリアルタイムで調査した。新しい理論を待っていたら何年もかかってしまう。ハーバード大学の凄腕エコノミストRaj Chettyはスタッフを大量動員してバリバリとデータを解析していった。JPモルガン・チェースは預金残高やクレジットカードの請求などの重要なデータを開示し、人々が現金を消費しているのか、それとも貯蓄しているのかを解明する一助となった。

 

こうした流れのおかげで、テクノロジーは経済に浸透していっている。支払いの大部分がオンラインへと移り、取り引き速度がはやくなっている。マッキンゼーによれば、リアルタイム決済は2020年、41%も増加したという(インドでは256億回もの取り引きが記録されている)。さまざまな機械や物にセンサーが取り付けられた。コンテナ船を追跡すれば、供給網の滞りも確認できる。中央銀行のデジタルコイン(Govcoins)はすでに中国で試験がはじまっており、50以上の国々が関心をもっている。Govcoinが普及すれば、経済動向の詳細をリアルタイムで確認できるようになる可能性がある。

 

 

イムリーなデータは政策の無駄をなくすだろう。たとえば、経済活動の低下がスランプに結びつくかどうかを簡単に判断できるようになる。政府のとる対策も改善されることだろう。中央銀行政策金利の変更による影響を見極めるのに18ヶ月以上かけている。しかし、香港では補助金を支給するのに期限付きのデジタル決済を用いている。Govcoinによって金利はマイナスになる可能性もある。正しいデータがあれば、危機の際に正確な目標を設定することができる。たとえば企業向けのローンは、バランスシートの改善には役立つが、一時的な流動性の問題をはらむ。社会保障による画一的な福祉の支払いのかわりに、仕事を失った人に即時金を渡すこともできる。デジタル決済ならば書類の必要もない。

 

リアルタイム革命によって経済的な決定は、より正確に、よりオープンに、よりルールに基づくものになるだろう。とはいえ、危険もある。新たな指標は誤解を生むかも知れない。たとえば、世界的な景気後退がはじまった

とか、ウーバーの市場シェアが縮小している、など。数字は数字であり、調査機関が骨を折って集めたデータにはバイアスがかかっているかもしれない。巨大企業はデータを溜め込み、不当に用いるかもしれない。フェイスブックは今週、デジタル決済を導入したが、いずれ連邦捜査局よりも個人消費に関して詳しくなるかもしれない。

 

最大の危険は傲慢さだ。経済全体を監視することにより、政治家や官僚は未来を先の先まで予測でき、社会を好都合に作り変えられると勘違いしてしまうかもしれない。まるで中国共産党の夢である。デジタルを駆使した中央集権だ。

 

実際のところ、数字に未来は予測できない。複雑にからみあった動的な経済は、ビッグブラザーの足元にはない。何百万という独立した企業や個人がそれぞれの思惑で行動しているのである。インスタント経済は千里眼でもなければ、全知全能でもない。退屈かもしれないが、変化を起こす力は秘められている。即時即応の理性的な意思決定によって。

 

 

【世銀レポ】コモディティー Oct 2021

 

Data: The World Bank

Commodity Market Outlook

October 2021

 

概要

 

2021年第3四半期、エネルギー価格が上昇をつづける一方で、非エネルギー価格は年初の急激な上昇が頭打ちになっている。天然ガスと石炭の価格は史上最高値をつけたが、需要の鈍化と供給制約の緩和のため、2022年には下降に転じる見通しだ。原油の価格は2021年の1バレル平均70ドル(約7,700円)から2022年には74ドル(約8,140円)に上昇すると予測されている。金属の価格は今年48%以上上昇しているが、2022年には5%の下降に転ずる見通しである。農業商品の価格は2021年には22%上昇したものの、2022年には広範にわたって安定するものと見られている。コモディティー価格の高止まりがつづけば、エネルギー輸入国の成長は鈍化し、低所得国における食料の確保がむずかしくなるだろう。さまざまなリスク要因がある。たとえば天候不順、さらなる供給不足、次なるコロナの波などなど。

 

今年のコモディティーの価格変動によって、ゼロ炭素経済への移行の難しさが際立った。都市部がその鍵をにぎる。なぜなら、エネルギー消費と温暖化ガス排出の3分の2を占めるのが都市部だからである。都市化に焦点をあてた特別レポートは、増大するコモディティー需要に関するものだ。過密な都市は、低密度な都市にくらべて一人当たりのコモディティー需要は少ない。都市化による将来のコモディティー需要の影響を最小化するためには、戦略的な都市計画が求められるだろう。

 

f:id:AirRoom:20211025083738j:plain

Commodity price indexes, monthly

 

f:id:AirRoom:20211025083815j:plain

Natural gas and coal prices

 

f:id:AirRoom:20211025083837j:plain

Iron ore and base metal prices

 

f:id:AirRoom:20211025083856j:plain

Oil price forecasts

f:id:AirRoom:20211025083911j:plain

Global oil consumption forecasts

 

 

なぜか掘れない石油 Oct 2021

 

The Economist, Oct 16th 2021

 

Business

The energy business

Playing for time

 

なぜか掘れない石油

 

 

中国の停電、インドの石炭不足、ヨーロッパの電力価格高騰、イギリスでの石油争奪戦、レバノンでの停電と燃料火災、世界的なエネルギー市場の機能不全はいたるところにみられる。

 

近頃の混乱によって、アメリカの石油価格は2014年以来の高値である1バレル80ドル(約8,800円)に達した。ヨーロッパの天然ガスの価格は3倍になった。歴史の遺物とも思われていた石炭の需要までが急増している。ある商品取り引き企業の最高経営責任者は言う、朝5時に出社してアジアなどで停電がおきていないか最新情報を確認しなければならない、と。そして北半球には燃料需要の高まる冬が迫っている。

 

数年前であれば、化石燃料の生産者らは価格の変動をみながら、生産量や投資額を素早く対応させてきた。2014年、原油が1バレル100ドル(約1万1,000円)を突破したとき、ヨーロッパの石油会社ロイヤル・ダッチ・シェルは300億ドル(約3兆3,000億円)を石油とガスの掘削に注ぎ込んだ。そして、世界最大のLNG液化天然ガス)生産者となるために530億ドル(約5兆8,300億円)をイギリスのライバルBGグループに費やした。

 

 

今回ばかりではない。気候変動によって石油とガスの企業にはかつてなかったほどのプレッシャーがかかっている。とりわけ化石燃料からの離脱を迫られているヨーロッパ企業はなおさらだ。ロイヤル・ダッチ・シェルも長期的には低炭素のガスと電力に向かっており、石油などの掘削事業への投資は今年、80億ドル(約8,800億円)ほど減少している。先月、テキサス州パーミアン盆地におけるシェール資産を、95億ドル(約1兆円)でアメリカ企業ConocoPhillipsに売却した。また、1936年以来のナイジェリアにおける開発からも手を引きはじめている。同地における石油の生産は2030年まで毎年1~2%ほど減らしていく予定だ。今回のエネルギー価格の高騰は今後の投資にどんな影響を与えるのだろうか。石油ガス掘削の責任者Wael Sawanはそっけなく言う、「私の考えでは、たいした意味をなさない」と。

 

こうした考え方は、石油産業全体に蔓延している。ヨーロッパの上場企業は新たな油井の掘削に対して、環境重視の投資家から反対圧力をうけている。BCGコンサルのPhilip Whittakerは言う、掘削への投資はクリーンエネルギーに対する公約を反故にするものだと受け取られかねない、と。アメリカの上場企業も、かつては石油価格の上昇とともにフラッキング(水圧破砕)によって盛んにシェールを掘りすすめていたが、いまや株主らの締めつけに遭っている。彼らは配当金や買い戻しによって利益を確保したいのであって、地中に穴を掘ることを好まなくなっている。

 

国営の石油企業でさえも、パンデミックのあおりをうけて、予算の束縛をうけている。サウジアラムコアブダビ国営石油など少数の企業だけが生産を拡大させている。全体としては、石油やガスに対する投資は落ち込んでいる。2014年の8兆ドル(約880兆円)から4兆円(約440兆円)へと半減し、この傾向はつづきそうである。

 

 

一方で、パンデミックが和らぐにつれ需要は驚くほど回復してきた。商品投資会社のGoehring & Rozencwajgによれば、余力のなくなるほどの水準に石油市場は達しているという。こうした事態は一時的なものかもしれないが、サウジアラムコアブダビ国営石油は敏速に対応している。一時的とはいえ、原油価格の上昇は急激である。すでに石炭や天然ガスの価格高騰に悩まされていた家庭をはじめ、製鉄・肥料製造・ボトル作りなどエネルギー消費の大きな産業にとっては苦しいところである。

 

環境的には、エネルギー価格の高騰によって化石燃料への需要が弱まるのは悪いことではない。とくに国際的な炭素税のおよばない部分に関しては。IEA(国際エネルギー機関)によれば、今年、化石燃料の消費が再拡大したことで、過去2番目の二酸化炭素排出量の増加となる恐れがある。2050年までに実質ゼロの目標を達成するためには、2021年以降、新たな石油やガスに対する投資は不要で、その代わり、2030年までにクリーンエネルギーへの投資を3倍にしなければならない。

 

IEAは天然ガスへの投資も不要というが、天然ガスは他の炭化水素エネルギーよりもクリーンである。ほかの低炭素排出のエネルギーといえば水素などになるだろう。だが、IEAも認めるように、本末転倒にもなりかねない。確かに化石燃料二酸化炭素排出の元凶ではある。しかし、代替エネルギーを確保せずに天然ガスの供給を減らすことは、負の効果をもたらす危険がある。

 

 

中国やインドなどでは石炭火力の代わりにガスが使用されている。それは二酸化炭素の排出量を減らすためである。投資会社Bernsteinは、中国の液化天然ガスの輸入は2030年までに倍(世界最大の輸入量)になると予測する。新たなガス田を開発しなければ、天然ガスは14%不足する計算になる。そうなると、アジアが石炭から抜け出せなくなってしまう。

 

さらに、天然ガスは電力網の安定維持には欠かせない。とりわけ、風力や太陽光などの不安定な電源にたよる地域ではなおさらだ(世界中の電力網がもっとつながっていればよいのだが)。このような場合、天然ガスにかかるコストが電気代に加算される。それは限界費用がゼロとされる再生可能エネルギーにおいても同じことだ。ガスの価格が上がれば、電気料金も上がる。そうなると、クリーンエネルギーへの熱意は薄れてしまいかねない。

 

次なるエネルギーは、どこにあるのか。商品取り引きのボスは言う、「天然ガスがダーティー燃料の欄に入れられてしまっているので、誰も投資する気にならない」と。民間部門のスーパーメジャーにとっての問題は、天然ガスと石油の生産が分けられないことである。なぜなら、この2つは同じ場所から同時に採掘されることが多いからだ。投資家たちも両者は双子か何かだと思っている。厄介なことである。「石油とガスを一緒くたにするのは、まったく視野が狭い」と、あるスーパーメジャーの役員は憤る。とはいえ、彼の会社は投資家たちを怒らせてまで、天然ガスの生産を増加させる気はなさそうである。

 

また、ある石油企業の役員は言う、石油の価格が高くなると、さらに投資したくなるかもしれない。しかし、長期的な環境目標を無視するわけにはいかない。国営の石油企業か、株式非公開の企業ぐらいしか、そういう選択はできないだろう、と彼は言う。最近のパーミアン盆地における掘削の増加は、非上場のフラッカー企業によるものだ、とも彼は言う。まるで禁酒法時代の密造酒づくりだ。石油とガスの価格が上昇すれば、当然、増産したくもなる。もし、公の目から逃れることができるのならば。

 

 

【グラフ】世界の株価ランキング2020

 

Data: The Economist

Pocket World in Figures 2020 (English Edition)

 

Stockmarkets

gains and losses

 

$terms,

December 31st 2019 to December 31st 2020

 

Best Performance

 

f:id:AirRoom:20211021202827p:plain

株価ベストランキング2020

 

Worst Performance

 

f:id:AirRoom:20211021202912p:plain

株価ワーストランキング2020

 

 

 

スリランカの完全有機 Oct 2021

 

The Economist, Oct 16th 2021

 

Asia

Sri Lanka

No more Mr Rice Guy

 

スリランカの完全有機

 

 

スリランカの片田舎、荒れた田んぼに肩を落とす男がいた。B. R. Weeraratneはため息をつく。象が田んぼで暴れるのはいつものことだ。政府が農薬の使用を徹底して禁じているため、彼の田んぼの主力2品種、naduとsambaの収量はもはや期待できない。56歳の彼は有機農法に理解がないわけではない。しかし、「土も植物も、そして人間にも学ぶ時間が必要なのだ」と彼は言う。ものには順序がある。それを無視してしまうと、彼のように貧困へと落ち込みかねない。

 

しかしながら、スリランカのラージャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領は頑なである。元軍人の彼は2019年に大統領に選ばれた。ひとえに無慈悲な強引さによるものだった。2009年、彼は兄Mahindaのもとで防衛大臣をつとめ、それから大統領になった。彼は徹底的にタミル人の反乱軍を攻撃して内戦を収束させた。都市開発長官としての彼は、スラム街の人々を何千人と追い出し、町をすかっりキレイにしてしまった。大統領としての彼はコロナ対策として軍人を医療スタッフととも働かせた。11歳以上の国民70%以上が2回のワクチン接種を終えている。

 

ラージャパクサ大統領の軍隊的アプローチによって、スリランカは一夜にして世界初の完全有機農業国家となった(皆乗り気ではないが)。彼のマニフェスト「繁栄と輝きのビスタ(Vistas of Prosperity and Splendour)」によれば、肥料の使用においても革命をおこすと約束されている。しかし、それには10年を要する。それだけに、今年初頭に完全な使用禁止を宣言されたことは、Mr Weeraratneのような農夫にとって大きなショックだった。農薬はもはや輸入されることはなく、在庫が尽きたらそれまでだ。プランターズ・アソシエーションによれば、今後半年の茶葉の生産およびその利益は25%程度落ち込むだろうとのことである(長期的には50%の減少もありうる)。茶葉の生産においてスリランカは世界第4位の大国であり、昨年の輸出額は12億4,000万ドル(1,360億円)、GDPの1.5%を占めている。

 

 

スリランカでは90%以上の農家が化学肥料を使用しており、彼らの85%が今季の収穫減を覚悟している、とシンクタンクVerité Researchは言う。国民の3分の2はラージャパクサ大統領の政策を支持しているが、そのうちの80%の人々は、最低でも1年間の移行期間が必要だと考えている。

 

国民は食べていかなくてはならない。インフレ率は6%近くをただよい、食品は11%以上値上がりしている。世界の商品価格は上昇し、外貨準備は減っている。国内の小売価格に上限を設けたことが、砂糖や粉ミルクなどの必需品の不足を招いている。8月31日、大統領は緊急事態宣言を発令した。軍官に市場を規制させ、在庫を没収してしまった。

 

食料品が底をつきはじめ、9月29日、大統領は米の価格の上限を引き上げた。その結果、17~32%ほど一気に値上がりした。10月8日には粉ミルク、砂糖、小麦、調理用ガスの価格も引き上げられた。政府は多少の輸入を認めたものの、GDP比42%の貿易赤字をなんとか縮小しようと、肥料などの輸入は抑えられた。

 

 

減りつつある26億ドル(約2,860億円)の外貨準備は、輸入にして半年分である。今から外債70億ドル(約7,700億円)の支払いも控えている。短期負債もまた外貨準備の重しとなっている、とエコノミストのDeshal de Melは言う。スリランカの信用格付けはジャンクにまで引き下げられ、国際市場からの借り入れは絶望的となった。金融大臣Basil Rajapaksa(大統領の兄弟)は先行きの暗さを認めている。コロナによって86億ドル(約9,460億円)の収入が失われた、と彼は言う。観光による収入が、通常であれば年間30~40億ドル(約3,300~4,400億円)ほどあるはずだったのだ。スリランカから他国への送金は一年前に比べて35%ほど減少している。

 

もはやIMF国際通貨基金)の再建プログラムを受け入れるしかない、とほとんどのエコノミストは考える。しかし、スリランカにとってその受け入れ条件を飲むのは難しい。誇大に吹聴してきた国家主権を損ないかねない。Mr Weeraratneのように、すでに搾り取られた人々はもう騙されない。この国の作物同様、大統領自身にも活力剤が必要とされている。

 

 

【グラフ】世界の証券取引所ランキング2020

Stockmarkets

Largest Market Capitalisation

$bn, end 2020

f:id:AirRoom:20211020100746p:plain

2020世界の証券取引所トップ10

 

f:id:AirRoom:20211020100826p:plain

2020世界の証券取引所 No. 11 - 20

 

f:id:AirRoom:20211020100855p:plain

2020世界の証券取引所 No. 21 - 38

 

Data from The Economist

Pocket World in Figures 2022 (English Edition)