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ギニアのボーキサイト Sep 2021

 

The Economist, Sep 7th 2021

 

Finance & Economics

Commodities

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ギニアボーキサイト

 

 

ギニアは人口1,300万の西アフリカの国であるが、世界のコモディティー市場で重要な役割をになっているということを、ご存知だろうか? 近年、ギニアではボーキサイト(bauxite)の産出が増加している。ボーキサイトというのは土中にある赤褐色の鉱石で、アルミニウム(aluminium)の原料となる。中国による多額の投資のおかげで、ギニアボーキサイト産出量は2015年の2,100万トンから、2020年は9,000万トンに増大し、世界全体の4分の1を占めるまでになった。その半分以上は中国の精錬業者に供給されている。中国で精錬されるアルミニウムの量は世界の半分以上におよぶ。

 

9月5日、ギニアが軍事クーデター(military coup)によって混乱に陥ったため、コモディティー市場も当然影響をうけた。すでに過熱気味だったアルミニウムの価格はさらに上昇し、ここ10年で最高のレベルに達した(ギニアにはまた、シマンド(Simandou)という世界最大級の未開発鉱山もある。この鉱山に投資しているChina HongqiaoとRio Tintoの株価は、クーデター勃発のニュースがはいるや、一時的に下落した)。

 

 

最近のアルミニウム価格の上昇は、ギニアの事情によるところが大きい。現在までで約40%値上がりしており、ほかの主要な金属よりも上昇幅が大きい。それは需要が拡大しているからでもある。ロックダウンのために自宅飲みが増え、アルミ缶が大量に消費されている。2020年はコロナ騒ぎのために経済は低調であったが、今後は建設関係のアルミニウム需要が増えるだろう。アメリカ、中国、ヨーロッパなどでインフラ建設の計画が増えており、資材の必要が高まっている。また、電気自動車はガソリン車に比べてアルミニウムをより使う。こうした要因が金属の需要を押し上げている。

 

需要が増えているにもかかわらず、供給が滞っている。8月、ジャマイカの精錬所が火災によって機能を停止した。カナダではリオティントの労働者が精錬所でストライキを起こした。中国でも混乱が生じている。アルミニウムを精錬するには大量のエネルギーが必要だが(電気の塊ともいわれる)、内モンゴルや新疆など各地で新たなエネルギー消費基準が導入され、生産の縮小を迫られている。雲南でも干魃によって水力発電が打撃をうけている。こうした事情により、中国の年間アルミニウム生産量が5%ほど落ちている、とJPモルガンチェースのGregory Shearerは見積もっている。

 

 

ギニアのクーデターがボーキサイトの供給をどれほど阻害するのかは、いまだ不透明である。いまのところ、鉱山は稼働しており、ボーキサイトは運び出されている。中国側の倉庫にも在庫は十分にある。しかし、他国政府がギニアの新政府に制裁を課す恐れがある。新政府自身が鉱山に課税する可能性もある。いずれにせよ、ギニアからのボーキサイトの流れは思わしくない。

 

中国のボーキサイト在庫がまだ豊富にあるといっても、中国の規制当局が次にどうでるかが問題である。金属価格の上昇が国内の製造業を害するのではないかと、当局は懸念している。中国はインフレを抑えるために、戦略的備蓄(strategic reserve)アルミニウムを放出しはじめている。

 

 

この方針は、他のそれと対立している。一つはエネルギーの消費ターゲットであり、一つは中国のアルミニウム生産制限である(中国は2017年に生産過多を理由に制限をかけた)。精錬所の生産リミットが迫ってくれば、生産を制限せざるをえない。となると、新たな精錬所を建てるまで、価格は上昇していくことになる。

 

一つの可能性としてあるのは、中国がアルミニウム精錬を国外で行うことだ。たとえばインドネシアなどは労働力が安価であり、ニッケルは一部をすでにインドネシアに移している。中国虹橋(China Hongqiao)は世界最大のアルミニウム生産者であるが、新たな精錬所はインドネシアに建設する予定である。

 

ギニアの新政府も、インドネシアボーキサイトを売ることで落ち着くかもしれない。もちろん中国の手を借りてだろうが。