英国誌「The Economist」を読む人

イギリス「エコノミスト誌」を読んでいます。

石油屋はつらいよ Sep 2021

 

The Economist, Sep 11th 2021

 

Business

Big oil in Iraq

Bagdad pay dirt

 

石油屋はつらいよ

 

 

石油業界のボスは、何をしても悪くいわれる。地中からハイドロカーボンを汲みあげれば儲かるが、環境団体のみならず、取締役会や政府の怒りまで買うことになる。再生可能エネルギーやグリーンエネルギーなどは聞こえはいいものの、投資家たちを満足させることができない。ところが、トタル(TotalEnergies, フランスの大手石油企業)は今週、両サイドを納得させるような方法があることを示してくれた。

 

9月5日、フランスのオイルメジャーは、イラク政府に25年間270億ドル(約3兆円)を投資する契約を結んだ。この資金はソーラー発電から石油の掘削まで様々なプロジェクトで利用されることになる。ある計画では、石油を採取する際に副産物として燃やされる天然ガスを、よりクリーンな電気へと変換するという。

 

 

この取引はイラク国益ともなる。イラクはエネルギー部門への投資を渇望していた。しかし、政治が不安定なために、トタルのライバル企業たるBPやシェル、エクソンモービルなどがイラクから撤退しはじめている。ソーラー発電や新たな石油があれば、腐れ縁のイランから輸入しているガスや電気に頼らなくても済むようになる(かつてイラクは不払いを理由に供給を絶たれたことがある)。石油漬けの国々で停電は日常茶飯事だが、来月の選挙のことを考えれば、それでは不味い。

 

CO2の排出をグリーンのベールで覆うことで、トタルの評判は保たれている。2050年までにCO2排出を正味ゼロにするという宣言によって、黒いイメージからの再ブランド化をトタルは試みようとしている。このプランは環境を考慮した多くの支出計画によって支えられている。

 

 

より条件の良い場所を探そうとすれば、皆が避けるようなところに分け入らなければならない。トタルの好戦的ボスPatrick Pouyannéは、クリーンエネルギーに投資しているのは古いタイプの石油会社だけだ、と言う。彼は世界一安いハイドロカーボンを、中東やアフリカに求めている。他ライバル企業がアメリカのシェールに金を注ぎ込んでいるのに対して、トタルはビジネスの最もやりにくいリビアベネズエラなどに投資している。もしうまくいけば、あふれるほどの大金が期待できる。イラクでの契約は950億ドル(約1兆4,500億円)を見込んでいる。

 

だが、なかなかそうはいかない。モザンビークとイエメンの巨大ガスプロジェクトは、戦争とテロによって駄目になった。ベネズエラではこの夏、資産の減額によって14億ドル(約1540億円)を失った。イラクでも、トタルは計画を削られ、50億ドル(約5,500億円)にまで減ってしまった。やはり政治的なリスクをなんとかするには、少なくとも政府高官の力を借りなければならない。この8月にフランスのマクロン大統領がイラクを訪れたことで、トタルの契約は成立した。一年のうちに2度も訪れて。