英国誌「The Economist」を読む人

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飢えるマダガスカル Sep 2021

 

The Economist, Sep 4th 2021

 

Leaders

Famine

Why Madagascar is going hungry

 

飢えるマダガスカル

 

 

マダガスカルの人々が危険な状態にある。国連によれば、110万人以上の食がない。5歳以下の子供50万人以上が栄養失調の状態にある。多くの家族はサボテン(cactus)で細い食をつなぐよりほかない。つぎの収穫は数カ月後である。それまでの「不毛のシーズン(lean season)」をどう過ごせというのか。

 

この惨禍には、いくつかの原因が考えられる。国連は気候変動(climate change)による被害だと言う。国連ワードフードプログラムのDavid Beasleyは、こう言う。「この地域は、気候変動を起こすような活動を一切していないにもかかわらず、もっとも高い代価を支払わされている」。ニュースでは、世界初の「気候変動による飢饉(climate famine)」と報道されている。

 

人間活動による気候変動は、この世界第4位の面積をもつ島を、確実に蝕んでいる。南マダガスカルは長い間、不定期の降雨に悩まされてきた。干魃がおこることは珍しくなく、飢饉はこれまで1903年、1910年、1916年、1921年、1943年に記録されている。最近はすっかり雨がすくなくなってしまった。現在の干魃は、ここ40年で最悪のものである。主要な作物であるキャッサバの収穫は、例年にくらべ60~90%少なくなる見通しだ。米の値段はウナギのぼりである。

 

 

そこにコロナウイルスが襲いかかり、マダガスカルはすっかり貧しくなった。その経済は昨年4.2%縮小した(人口が増えているにもかかわらず)。島のほとんどを閉鎖するしかなかったからだ。その結果、島の大切な現金収入だったツーリズムが壊滅した。これまでは、熱帯雨林キツネザル(lemur)を目当てに、裕福な外国人が遊びに来ていたが、そうした人々は自宅から出てこなくなった。マダガスカルにおいて、ツーリズムで生計をたてていた人々は150万人いたといわれるが、いまや食い扶持を失ってしまっている。

 

 

飢餓から救うためには、寄付の助けが必要だ。とくに子供たちには十分な栄養をあたえないと、健全な体と心が養えない。マダガスカル政府も目を覚まさなければならない。経済をしっかり回してさえいれば、マダガスカルの人々はコロナとやり合いながらも、豊かな道をさがせるのだ。

 

マダガスカル島の隣には、モーリシャスという小さな島がある。この島はマダガスカル同様、ツーリズムが盛んで、やはり異常気象とコロナに打ちのめされた。モーリシャスの経済は2020年、マダガスカル以上に縮小してしまった。さらに悪いことに、4月の豪雨によって道路と作物が流さた。それでもモーリシャスでは飢餓が発生していない。なぜなら、マダガスカルに比べ、モーリシャスの人々は17倍も収入があるからだ。

 

半世紀まえには、マダガスカルモーリシャスの差は2倍程度であった。しかしそれから、モーリシャスは政治を安定させ、丁寧に運営し、多くの投資家たちを味方につけた。それに対してマダガスカルでは、20年以上共産主義(communism)に翻弄され、政変が相次いだ(2009年の政変はAndry Rajoelinaが起こした。彼はその後、投票によって大統領に選ばれた)。こうした政治のまずさによって、現在2,800万人いるマダガスカルの人々の生活レベルは、1960年に独立したときと同じくらい貧しいままである。Rajoelina大統領は前任者よりましではあるが、人心をつかめずにいる。コロナウイルスには薬草をすすめるばかりで、ワクチンはいっこうに普及していない。

 

 

マダガスカルの教訓は2つある。温室効果ガスを削減しなければならないこと、そして、経済を成長させることで、多くの問題が対処可能になることである。ただ、いまはマダガスカルに救済の手が必要だ。将来のことを考えれば、もっとマシな政府も。