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COP26に向けて Oct 2021

 

The Economist, Oct 30th 2021

 

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Climate change

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COP26に向けて

 

 

雨が毎日降るからさ、と十二夜(Twelfth Night)の終わりでフェステは言う(シェークスピア)。COPが毎年あるからさ。1995年以来、各国は気候変動に関する国際連合枠組条約 (United Nations Framework Convention on Climate Change)に毎年参加してきたが、パンデミックのため2020年だけは開催が見送られた。過去のCOPは以下のとおり。2007年バリ・アクションプラン、1995年ベルリン・マンデート、1995年京都議定書、2011年ダーバン・プラットフォーム、2009年コペンハーゲンにおける手痛い失敗、2015年パリ協定。こうした努力にかかわらず、温室効果ガスは増え続けており、気候温暖化は進行している。いつものことだが、毎回、最後のチャンスである。

 

外交官、科学者、ロビイスト、活動家、芸術家、メディア、政治家、ビジネスマンらが10月31日からはじまるCOP26のためにグラスゴーに集まる。すべてを却下することも容易だが、それは間違いだ。UNFCCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)とCOP(気候変動枠組条約締約国会議)は欠陥もあるが、歴史的に重要な役割を担ってきた。化石燃料だのみの人類の繁栄を根底から変革しなければならない。

 

COPが重視される理由の一つは、実際に将来を変えることができるからである。総意に基づくルールとして、努力目標が定められる。パリ協定においては19世紀に比べてプラス2℃以下に気温の上昇を抑えることになっている。これは先進国も途上国も変わらない。今回のグラスゴーにおいては、パリ協定のターゲットにむけた一層の努力、そして新たな国際誓約が盛り込まれるであろう。とはいえ、目標を達成するためには、野心が欠けるかもしれない。

 

 

UNFCCとCOPにおけるプロセスが重要であるのは、科学者、外交官、活動家、そして世論が、現在の世界が取り組まなければならない基本的な事実を認識するための、最良の仕組みだからである。約80億人が物質的に快適な生活をおくるためには、石炭・石油・天然ガスありきの経済では限界がある。二酸化炭素の排出量があまりにも多くなってしまうために、化石燃料による発展は停滞してしまうからだ。

 

今週の特別レポートにもあるように、この論理がハッキリあてはまるのはアジアである。アジアでは15億人あまりが熱帯に暮らしている。何億もの人々が海沿いに住んでいる。経済をさらに発展させるためには、より多くのエネルギーが必要になる。過去数十年間のように化石燃料だけを当てにするのであれば、洪水、台風、熱波、旱魃などに対応するために多額の費用がかかってしまい、決して豊かになることはできない。温暖化がすすめば、現状を維持するだけでも何倍も苦労するだろう。排出ゼロのテクノロジーが、彼らを解放してくれるかもしれない。無限のエネルギーを利用できればの話だが。

 

長期的に成長をつづける唯一の方法は化石燃料に頼らないことである。排出ガスが増加しているアジアの国々は将来的に排出を減らさなければならない。先進各国の排出量はすでに減少している。インドはこうした不公平を声高に指摘し、今のところカーボンニュートラルを受け入れていない。インドは言う、過去に排出した分の責任をとるべきだ、と。

 

 

たとえそうかもしれないが、インドもしくは同様の他国にとっての問題は、排出を削減するためのコストが膨大であり、それらは次世代の重荷となってしまうことである。次世代の大多数は途上国に暮らしており、そこではリーダーシップの弱さから未来が安定しない。アメリカがパリ協定に復帰したからといって、突然頼れるパートナーになるわけではない。最大の排出国である中国も同様である。中国の影響力は莫大であるが、いまのところ形だけの公約ばかりで、実質がともなっていない。コストを平等に分担するための多国間制度は脆弱であり、全会一致のコンセンサスを得られるわけではない。

 

がっかりするかもしれないが、UNFCCとCOPが変化を起こすための最良のフォーラムである。議論が尽くされるまでは、大胆かつ迅速な行動を起こすことが最善の反応である。ヨーロッパなどの先進諸国が、他の国々が納得するよう、先陣をきるべきだ。

 

気候変動に関しては、すべての国が一斉に前進するにはどうすればよいか、見極めなければならない。メタンの排出を大幅に削減することは急務である。脱二酸化炭素のために途上国を支援することは、民間部門に対する政府投資のリスクを減らすことになる。それと並行して対応のための援助も増やさなければならない。イノベーションをさまざまな方法で奨励するべきだ。アメリカの45Q(CO2税額控除)は拡大されるべきであり、ヨーロッパでも行うべきである。

 

 

代替エネルギーが十分でないままに、化石燃料への投資が落ち込んでいる。近頃の価格高騰によって事態は一層悪化した。長期的に化石燃料の価格が上昇していくことは必要なことであろうが、急騰したり急落したりでは有害でしかない。各国政府は代替エネルギーへと先走りする前に、現行のシステムに余裕をもたせる仕組みを構築しなくてはならない。化石燃料の価格が落ちるときが、切り替えるべき良い時節となるだろう。

 

一時的な救いを化石燃料にもとめるわけにはいかない。インドの首相Narendra Modi、オーストラリアの首相Scott Morrison、ウェストバージニア州上院議員Joe Manchin、彼らは化石燃料の時代が終わるとは決して言わない。エネルギーを移行する計画をたてる責任を回避しようとしているとしたら、まったくの臆病というよりほかない。実際、オイルとガスが一夜にして不要になるわけではないが、終わりに向かっていることは確かだ。石炭も手仕舞わなければならない。

 

答えられていない質問がある。パリ協定では大気中の二酸化炭素を減らすことを目標にかかげている。しかし、誰がやるのか?誰が金をだすのか?太陽光を減光させるソーラー地球工学に解決策をもとめる国があるかもしれない。それは可能なのか?もしできなかったとしたら、その過ちを修正できるのか?

 

フェステは変わらぬ世界を嘆いた。制御不能の変化は、気候危機につながってしまう。それでも、変化する事象に対応していくことで、誰もが長期的な繁栄を謳歌できる世界にすることができる。有限な化石燃料による時代が完全に終わってくれれば、未来は最高になるだろう。