英国誌「The Economist」を読む人

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ブタ肉処理工場において Oct 2021

 

The Economist, Oct 23rd 2021

 

Britain

Agriculture

Making a pig’s ear of it

 

ブタ肉処理工場において

 

 

食肉処理場に着いたブタは狼狽えていた。二酸化炭素の充満した小部屋に入れられると、そのまま倒れた。そして、解体ラインへと送られる。食肉処理者はブタを逆さまに吊るすと、喉を割いて内蔵を取り除いた。電気ノコギリで骨ごとにバラされ、肉が削ぎ取られる。肉が切りそろえられると、パッキングの準備は完了だ。なかなかハードな仕事だ。血に塗れ、惨めな気分になる。こうした仕事をマスターするのに3年はかかる。

 

イギリスでは、こうした職人が不足している。The National Pig Associationによれば、125,000~150,000頭の豚が加工待ちだという。ボリス・ジョンソン首相は問題を大きくしたくなかった。10月14日、政府は食肉関係者に対して、6ヶ月の新たなビザを800件交付することに決定した。これで何百、何千という豚が無駄にならずに済むだろう。

 

問題は中国からはじまった。昨年、イギリスの豚肉の半分近くが中国に輸出されている。今年に入り、中国の養豚農家はアフリカ豚熱ウイルスの打撃から回復し、豚肉の輸入量が減少した。その結果、熟練の食肉処理者が必要になったのである。「中国の輸出用なら、脚ごと送ればいいのですが、イギリス国内向けの場合は、ステーキサイズにまで切り分けなければならないのです」と、特殊法人the Agriculture and Horticulture Development BoardのBethan Wilkinsは言う。

 

 

影響はヨーロッパ中に広まったが、イギリスではさらなる問題もあった。9月、二酸化炭素の在庫不足に見舞われたのだ(豚を気絶させるためだけではなく、パッキングの際にも用いられる)。ブレグジット後の新たな移民法の、特に言語に関する部分も問題になっている。the British Meat Producers AssociationのNick Allenは言う、「食肉処理者の多くは自分の手で仕事をしたいと思っています。彼らが母国語の試験をパスできるかはわかりません」と。

 

現代の養豚農家は脆弱である。Mr Allenは言う、「至上命令は、季節に関係なく、毎週毎週一定数を出荷しつづけることです」と。動物福祉に関する法律によって、飼育される豚には身体の向きを変えたり、自由に横になれるだけの十分なスペースが必要とされる。たとえスペースを確保できたとしても、ほかにも問題がある。エサの値段が高く、大きな豚を解体するのにも費用がかさむ。雄豚の汚れ、老豚の食味、去勢豚なども問題になる。

 

もし食肉処理場で殺すことができない場合、農場で殺すことになる。そうなると、法的には食肉として販売することができない。業界関係者は新たなビザを歓迎している。イギリスには1万人以上の食肉処理職人が必要である。政府は死体を3~6ヶ月間保管できるようにする“private storage aid”というプログラムを立ち上げようとしている。また、食肉生産者への減税も考えている。長期的には、自国民でこの産業を切り盛りしていきたいと思っている。しかし、問題なのは皆動物好きだということである。