英国誌「The Economist」を読む人

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ボルボの電気自動車 Oct 2021

 

The Economist, Oct 9th 2021

 

Business

Carmaking

Electric blue and yellow

 

ボルボの電気自動車

 

 

ボルボのスポーツカーには、青と黄色の小さな旗からトール・ハンマー型のヘッドライトまで、スウェーデンの伝統が息づいている。安全性と環境性能を謳ったスカンジナビアの洗練されたデザインは、ボルボをヨーロッパのみならず、中国やアメリカにまで行き渡らせた。さらなる躍進はつづく。10月4日のIPO(新規株式公開)に際し、ボルボ最高経営責任者Hakan Samuelssonは言った、「よりスウェーデンらしく、よりグローバルに」と。

 

スウェーデンに別れを告げ、ストックホルムに上場することで、ボルボノルウェーアイデンティティーが強化されることになるだろう。IPOによって、より広い世界へ、より幅広い投資家へ訴求することになる。変化の早い自動車業界を舵取りしていくため、その小規模な機敏性を活かしながら。Samuelssonは言う、吉利との関係は変わらない、と。中国の吉利は2010年にボルボをフォードから18億ドル(約2,000億円)で買い取って以来、筆頭株主の地位にある。ボルボと吉利は引き続き、コストと技術を共有していくという。

 

吉利が2018年にボルボIPOを諦めた表向きの理由は、中国と西欧間の貿易戦争であった。しかし実際のところ、投資家たちは当時のボルボに300億ドル(3兆3,000億円)の価値があるとは思っていなかった(今でこそ妥当に思える評価である)。フォードの元でボルボは苦しんだ。昨年のアメリカでの販売台数は37万4,000万台で、健全な経営のためには来年6月までの12ヶ月間で77万3,000万台を販売しなければならない。2025年までに年間1,200万台を目指しているが、それは達成可能な数字である。販売に関して、カーディーラーを通すのではなく、顧客に固定価格で直接販売するか、サブスクリプション(月々定額制)によるものを考えている。

 

 

より重要なことは、ボルボがEV(電気自動車)において他社を先んじていることである。これは顧客も投資家も認めるところだ。ボルボは2030年までに完全電動化を目指しており(他社の目標よりずっと早い)、内燃機関部門は別に独立させて、電動化に集中する予定である。さらにボルボは、スウェーデンのバッテリー企業Northvoltと提携してギガファクトリーを建築し、大量供給を可能にする計画だ。ボルボの半ば所有するEV専用メーカーPolestarは、特別買収企業の逆買収によって来年には上場するという(200億ドルの評価額を目指している)。ボルボの製造能力、販売およびサービス網を活かして、Polestarはバッテリーの生産を請け負う。多くのEVスタートアップ企業は、こうした地盤をもっていない。

 

吉利はボルボを所有していることで、10年後には利益を手にするだろう。中国企業は支配的な地位を保つだろうが、新株発行によってカーメーカーから輸送技術グループへと再編成していくだろう。そうしたグループは、輸送サービスや自律運転車などに必要となるスマートフォンや衛星なども手掛けるはずだ。ボルボは30億ドル(3,300億円)近くをIPOによって調達するだろう。Mr Samuelssonは言う、カーメーカーは電動化の時流にのらなければならない。ライバル企業もまたそうすることだろう、と。