英国誌「The Economist」を読む人

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サッカーW杯を2年に一度に Sep 2021

 

The Economist, Sep 30th 2021

 

The Economist explains

Why does FIFA want to hold the World Cup every two years?

 

サッカーW杯を2年に一度に

 

 

サッカーの国際試合は予定が詰まりすぎており、選手らは疲れ切っている。Pedri ことPedro Gonzȧlez Lópezは、18歳のエリート選手としての最初のシーズン、バルセロナとスペインで64試合をプレイした。平均すると6日に1試合である。オリンピックの決勝を戦った、そのわずか8日後、バルセロナでの新たなシーズン、最初のゲームがはじまった。過労を危惧したクラブは8月、彼に休暇を与えた。

 

FIFA国際サッカー連盟)とFIFPRO国際プロサッカー選手会)はともに、試合が多すぎると思っている。FIFAの会長Gianni Infantinoと国際サッカー開発部門のチーフArsène Wengerは、試合日程の組み直しをミッションとしている。その第一歩は、じつに奇妙なものだ。彼らはFIFAの目玉、ワールドカップを4年に一度から、2年に一度にするという。そんなことをしたら、試合が減るどころか、増えるのではなかろうか。さらに、2026年のトーナメントは32チームから48チームにするという。その真意は何なのか、ワールドカップは2年ごとになるのだろうか?

 

 

Mr InfantinoとMr Wengerは、この変更によって、スポーツはさらに発展すると言う。より多くの収入を得て、サッカーをする小さな国々に分け与えることができるからだ。アフリカサッカー連盟と南アジアの4つの連盟は賛成している。このことは驚くにあたらない。サッカー小国の各国連盟は、FIFAからの資金に頼りきりであり、そのFIFAの主たる収入源はワールドカップである。2018年のロシア大会では、54億ドル(約6,000億円)の収入が放映権やライセンス料などによってもたらされている。この額は、2015~2018年におけるFIFAの収入の83%を占める。

 

こうした提案は、サッカーの中心地たるヨーロッパと南アメリカからの受けがよくない。UEFA欧州サッカー連盟)とCONMEBOL南米サッカー連盟)による権威あるトーナメント(ヨーロッパチャンピオンシップとコパアメリカ)が、FIFAが追加でワールドカップをやろうとしている年に重なっている。この両大会はワールドカップ以外の年に移せるかも知れない。だが、選手らはまともな夏休みをとれなくなってしまう。FIFPRO国際プロサッカー選手会)は神経質になっている。今の状態でさえ、推奨されている5週間のオフシーズン休暇をとれている選手はほんの一握りしかいないのだ。UEFA欧州サッカー連盟)は2年ごとのワールドカップには選手を出さないと脅しをかけている。有名選手なしの大会では、その魅力は薄れてしまうだろう。

 

 

Mr Wengerはワールドカップを2年毎に開催できるかどうかの調査を開始した。しかし、その結果が公表される前に、その可能性が示唆された。FIFAのプレスリリースによると、サッカーファンはワールドカップをもっとやって欲しいと望んでいることがわかった。30%が2年に一度を望み、4年ごとは45%だった(毎年が11%、3年ごとは14%)。FIFAは9月30日、関係団体をオンライン議論の場に招いた。しかし、現在のところ議論不足のため、既成事実の枠をでることができていない。

 

Mr Wengerによる提案には、いくつか素晴らしいアイディアが隠されている。彼はFIFPROのいう5週間の強制休暇を確実なものにしたいと思っている。そしてまた、各国リーグの合間に行われている国際試合を、いまほど頻繁にやりたくないとも思っている。しかし、だからといってワールドカップを2年ごとにやる必要はない。大会の権威を保持するためには、あまり頻繁にやらないほうがよい。より喫緊の課題は、Pedriのような選手の可能性をさらに伸ばすことである。試合日程がその妨げになるのではなく、より助けになるように。