英国誌「The Economist」を読む人

イギリス「エコノミスト誌」を読んでいます。

チリのサーモン Sep 2021

 

 

The Economist, Sep 23rd 2021

 

The Americas

Salmon farming

Fishing for compliments

 

チリのサーモン

 

 

チリのサッカー選手Alexis Sánchezは、2015年のCopa América勝戦において、14回の優勝を誇るアルゼンチン相手に、決定的なPKを決めた。チリにとって100年ぶりとなる優勝であった。チリの担当官らは、彼を輸出の宣伝塔とするべく、6月にはじまる政府機関ProChileによるキャンペーンの顔役に指名した。企業集団SalmonChileの長Arturo Clémentは、チリが持続可能な海産物(sustainable fish)による世界的な輸出国となることを望んでいる。

 

魚の養殖により海への負荷を減らしつつ、安価な魚プロテインを提供できる。しかし、それほど環境に優しくないと言う者もいる。なぜなら、肉食魚であるサケやマスには、野生の魚がエサとして与えられているからである。過去20年前に比べて、世界中の漁業は持続可能な方向へ向かってきている。たとえば、サケには植物由来のエサを与えたり、抗生物質の使用を控えたりしている。

 

 

チリの漁業には、やるべきことがまだまだある。バクテリアを殺す抗生物質を、チリではサケ1トンあたり500g使用しているが、ノルウェーではほとんど使っていない。さらにチリでは排水中の栄養素の割合が高く、ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカの約15倍である。2016年には海水温の上昇によって、2度も藻が大発生しており、甲殻類や養殖サケが何百万も死んでいる。最初に藻が大発生した際に、死んだ魚4,500トンを海に投棄したことが原因ではないかと言われている。その見解を政府は否定しているが、独立した調査部会はその可能性を否定していない。

 

チリの環境基準は、独裁者General Augusto Pinochetの時代から変わっていない。軍の政府は銅以外の輸出産業を求めたが、サケの養殖では心細かった。しかし今やサケが第2の輸出品目になっている。この10年間、漁業は潤っていたが、環境負荷を減らす努力は怠っていた、とチリ大学のBeatriz Bustosは言う。

 

 

生産者は変わりはじめている。2017~2019年のあいだに、抗生物質の使用量は3分の1に減った。チリの憲法制定議会155名のうちの半数以上が、環境保護を新憲法に書き加えることに賛成した。それは、環境政策を求める声の高まりを受けてのことだった。

 

漁業関係者は、従来の方法から脱却しなければならない。さもなければ存続の危機にさらされるであろう。