英国誌「The Economist」を読む人

イギリス「エコノミスト誌」を読んでいます。

牛のトイレトレーニング Sep 2021

 

The Economist, Sep 16th 2021

 

Science & Technology

Farming and the climate

How to toilet to fight climate change

 

牛のトイレトレーニン

 

 

子犬はしつけることができる。人間も2~3歳になればそうだ。ドイツthe Fredrich-Loweffler-Institut のDr Jan Langbeinは、気候変動の対策として、牛のトイレトレーニングをはじめている。

 

牛の尿には、窒素豊富な尿素(urea)が含まれている。牛の排泄物(faeces)が酵素によって分解されると、尿素アンモニア(ammonia)に変化する。土壌の微生物は、アンモニアを亜酸化窒素(nitrous oxide)に変換する。この亜酸化窒素は歯医者の麻酔として知られているが、温室効果ガスの一つでもある。亜酸化窒素は農業によって大量に放出されており、EUの酪農場のアンモニア排出量は、全体の70%におよんでいる。

 

 

牛の尿をアンモニアになる前に集めて処理することが最善と思われる。しかし過去の経験では、牛を狭いエリアに閉じ込めておかないかぎり、とても難しいことがわかっている(それでは牛の健康に悪い)。Dr Langbeinはカレントバイオロジー誌に、こう書いている。放し飼いの牛(free-roaming cow)を自分でトイレ(latrine)まで行かせることによって、この難題(conundrum)を解決できるかもしれない、と。

 

しかし、トイレ問題は込み入っている、とDr Langbeinは言う。まず、膀胱(bladder)がいっぱいになっていることに気づかなければならない。そして、すぐに排泄しないようにコントロールしなければならない。最後に、排尿する筋肉を意識して緩めなければならない。こうした困難を克服するため、Dr Langbeinは牛のトイレトレーニングを3つのステージに分けて取り組んでいる。

 

 

最初の課題は、排尿を正しい場所、トイレにさせることである。まず、子牛たちをトイレに集め、そこで尿をするご褒美として糖蜜(molasses)や大麦を与える。次に、トイレにつづく通路(alley)の近くで自由にさせる。もしトイレで尿ができたらご褒美がもらえるが、通路で尿をしてしまったら、軽い罰として水のシャワーを浴びることになる。最後に、トイレへの通路が長く延ばされ、牛は徐々に長い時間、長い距離を我慢できるようにトレーニングされていく。

 

牛はかなり頭の良い動物であり、トイレトレーニングもかなりうまくいった。16頭の子牛のうち、11頭がトイレを成功させた。研究者が言うには、人間の子供とだいたい同じくらいの成功率だという。トイレまで排尿を我慢できた牛は現時点で77%にのぼっている。

 

 

Dr Langbeinは、この方法をもっと良くできると前向きに考えている。尿トレーニングの原則を排泄物全体に応用できるだろう(排泄物には窒素が含まれており、亜酸化窒素の元となっている)。アメとムチのバランスを調整すれば、トレーニングの効果をより永続的なものにできるかもしれない。トイレへの通路に設置した水スプレーの位置を調整したところ、トイレの成功率を高めることができた。8頭に4頭の成功率だったものが、8頭に7頭の成功になったのだ。しかし、実験サンプルの数が少なすぎるため、統計的に有意とは言いがたい。さらなる調査が必要である。

 

次のステップは、実際の農場でトイレトレーニングができるかどうかである、とDr Langbeinは言う。トイレを設置し、トレーニングを行うには時間もお金もかかる。農業主のやる気次第ということになるだろうが、気候変動の対策となるならば、一歩づつでも進むべきだろう。