英国誌「The Economist」を読む人

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なぜロナウドは7番か Sep 2021

 

The Economist, Sep 1st 2021

 

The Economist explains

How do footballers get their shirt numbers?

 

なぜロナウドは7番か

 

 

2009年、クリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)マンチェスター・ユナイテッドからレアルマドリードに移籍した。移籍金(transfer fee)は8,000万ポンド(約121億円)で、当時のサッカー界では最高額だった。そして現在、ロナウドはこのイングランドのクラブに戻ってきた。しかし、パフォーマンスのピークは過ぎているため、契約くんは1,285万ポンド(約20億円)にとどまった。

 

ファンには一つ疑問がある。なぜロナウドは、彼のトレードマークともいえる背番号7番をキープできるのか、ということだ。この7番をロナウドに最初に与えたのは、マンチェスター・ユナイテッドの元監督アレックス・ファーガソンだ。2003年に彼が入団してきたときのことだった。それ以来、ロナウドレアル・マドリーに移籍するまで、ずっとこの背番号を背負つづけた。

 

 

現在、マンチェスター・ユナイテッドの7番はEdinson Cavaniがつけている。クラブの属するプレミアリーグのルールでは、シーズンを通して同じ背番号をつけなければならない。クラブはリーグに対して、例外(exception)を認めてくれるよう願い出ている。

 

ところで、サッカー選手の背番号は、どのようにして決定されるのだろうか。

 

 

イングランドでクラブサッカーが流行りはじめたのは19世紀のことである。その頃の選手たちは背番号をつけていなかった。番号のかわりに、ピッチ上のポジション位置で見分けていた。だいたいのチームは2-3-5と呼ばれるフォーメーション(フルバック2人、ハーフバック3人、フォワード5人、そしてゴールキーパー)を用いており、控えの選手(substitute)はいなかった。そのため、ピッチ上で選手を見分けるのは、なにも難しいことではなかった。

 

クラブサッカーで、はじめて背番号(shirt number)が用いられたのは1928年8月、アーセナルチェルシーがそれぞれ、シェフィールド・ウェンズデイスウォンジー・タウンと対戦したときだった。イングランドナショナルチームが公式に背番号を採用したのは1937年、オスロノルウェーを6-0で破ったときである。1939年には、すべてのサッカークラブが1から11番までの背番号を着用するよう、イングランドのサッカーリーグ運営委員会によって決定された。1965年から控え選手に12番が、1987年には2人目の控え選手に14番が認められるようになった(13番は縁起がよくない)。

 

1から11番までの数字は、2-3-5のフォーメーションに対応していた。当時のニュース記事および試合プログラムによれば、ゴールキーパーが1番、ライトバックが2番、レフトバックが3番と下から順番につづき、最後の11番はレフトウイングだった。この番号順は、フォーメーションが4-4-2(ディフェンダー4人、ミッドフィルダー4人、ストライカー2人)に戦術変更されるまで用いられていた。

 

 

時代がくだりながら、背番号とポジション位置には、厳密なつながりがなくなっていく。各国によって戦術が工夫されていったからだ。たとえばハンガリーは1950年代、ディフェンダーは2人から4人に、ミッドフィルダーが5人と、イングランドで一般的だったフォーメーションとは異なっていた。1953年、イングランドハンガリーに3-6と敗れたわけだが、それは、ハンガリーのポジションに意外な背番号が割り振られていたため、イングランド側が混乱してしまったためだった。

 

1978年のワールドカップでは、アルゼンチンの背番号が、選手名のアルファベット順に与えられていた。通常ゴールキーパーがつける1番を、ミッドフィルダーのNorberto Alonsoがつけていた(名前がAからはじまるため)。

 

1993年、プレミアリーグイングランド)はそれまでの背番号システムを廃止し、ポジションにかかわらず同一選手に同一番号を、シーズンを通して着用させることとした。そのほうが選手を見分けるのが容易だったからである。そのシーズンに用いられた背番号の数は37個だった。すぐに他のリーグも、このイングランドの例に従うようになった(ワールドカップのような国際試合では、その大会用の背番号を各選手がつけるようになった)。

 

 

人気のある若い番号(low numbers)は、チーム内で優秀な選手に割り振られることが多い。いわゆる伝統的な「先発11名(first 11)」はレギュラー常連選手を意味するようになった。センターフォワードの点取り屋(goalscorer)は9番を欲しがる。ロナウドの7番のように、自分専用の番号をもつことも選手のあごがれだ。

 

CR7(クリスティアーノ・ロナウド7番)と刻まれたプロダクト(たとえば下着、靴、消臭剤、ホテルの番号にいたるまで)は強いブランド力をもつ。たとえ今回、マンチェスター・ユナイテッドでの再スタートで「ラッキー7」を得られなくとも、ロナウドほどの選手なら、どの番号でも新たなブランドになるだろう。