デルタ株とワクチン接種 Aug 2021
The Economist, Aug 21st 2021
Graphic detail
Covid-19 vaccines
デルタ株とワクチン接種
8月18日、アメリカの軍医総監(surgeon general)は言った、Covid-19ワクチンを8ヶ月以上前に接種した人は、追加のワクチン(extra shot)を打つことができる、と。
イスラエルではすでに多くの国民が3回目の接種を受けている。フランスとイギリスでも、ブースター(追加免疫)接種の準備をしている。
Covid-19ワクチンは重症化(入院および死亡)を防ぐということに効果が認められているものの、感染(transmission)を防ぐ力は弱い。いや、むしろ感染に対しては防御力(protection)が落ちはじめている。アイスランドやイスラエルでは、一ヶ月ほど前にほとんどの成人が接種を終えているにもかかわらず、感染者数が急増している。
その理由は2つ考えられる。一つはデルタ株(the Delta variant)に対してワクチンの効き目が弱いということ。もう一つは、接種から時間がたつほどワクチンの効力が落ちるということ。新たな報告はこの2つの理由を裏付けている。
オックスフォード大学のKoen Pouwels氏の研究は8月19日、イギリス人50万人に対して行われた。調査は2つの期間(two time periods)を比較している。
α:アルファ株が優勢だった期間(2020年12月1日から2021年3月16日)
δ:デルタ株が優勢になった期間(2021年3月17日から8月1日)
ファイザー製のワクチンは、アルファ株の期間には94%の効果がみられたものの、デルタ株の期間では84%にまで落ち込んだ。アストラゼネカ製は86%から70%に、一度感染した人々は87%から77%に下がった。つまり、アルファ株に比べ、デルタ株では10~16%ほどワクチンの効きが落ちていた。
また、時間の経過(the passage of time)とともに、ワクチンの効きは弱まっていく。イスラエルの研究によれば、ファイザー製のワクチンを1~2月に接種した人々は、6~7月に接種した人々に比べ、50%も「ブレークスルー感染(ワクチンを打ったにも関わらず感染すること)」が起こりやすくなっている。これはイギリスの研究と同様の結果である。
2回目のワクチン接種から3ヶ月もたつと、ファイザー製のワクチンは10%ほど効果が落ちる。アストラゼネカ製も、より緩やかではあるが、結局は効果が落ちる。
感染力に関しては、アルファ株とデルタ株では目立った差があらわれた。ワクチンを打っていながらアルファ株に感染した人々は、ウイルスの拡散量が減っていた。ところがデルタ株では、ワクチンを打った人でもウイルスの拡散量は減らなかった。
理論上、感染症に対する免疫力は、重病に対する防御力を損なわずに弱まっていく。なぜなら、ワクチンによって強化された免疫系は、ウイルスを素早く追い出すことができるからである。
しかしながら、イスラエルの入院者数は3月時点のレベルにまで上昇している。はたして、入院患者数を減らすために追加のブースター接種は必要なのだろうか、いまだ判定は困難である。