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電気自動車は400Vから800Vへ Aug 2021

 

The Economist

Aug 19th 2021

 

Science & Technology

Electric Cars

Electric vehicles which operate at 800V can be recharged in half a time

 

電気自動車は400Vから800Vへ

 

 

電気自動車(Electric vehicles)がよく見られるようになってきた。イギリスのJATO Dynamics によれば、2021年1-3月期のEV販売台数は75万台である。昨年同期、新車販売台数(new-car sales)に占めるEVの割合は2%だったが、今年同期は4%を超えるまでになっている。

 

とはいえ、電気自動車(EVs)の「走行距離に対する不安(range anxiety)」はぬぐいきれない。長旅(a long journey)の途中でバッテリーが切れてしまわないか心配でしょうがない。

 

 

そんな不安を一掃すべき朗報(the good news)がもたらされた。

 

電気自動車(EVs)の多くは現在400Vであるが、いくつかの自動車会社は800Vまで電圧を上げてきている。電圧(voltage)が高いほど、電流(current)は細くてよい。電流が細ければ軽いケーブルで済む。つまり自動車本体の重量を軽くすることができる。その結果、燃費が向上して走行距離がのびる。

 

イギリスGKN Automotive のChristoph Gillenが言うには、同社も800Vの開発を加速させているという。また、ケーブルの素材となる銅(copper)は現在値上がりしているため、ケーブルを軽くするほど車体価格も下げられるという。

 

 

Gillen博士によれば、800Vの電気自動車には最新の急速充電器(the latest fast chargers)が使えるようになる。たとえばドイツIonity社による350kWの急速充電器は、電気自動車の電圧に応じて充電速度を変化させるのだが、400Vの電気自動車に比べ800Vの電気自動車は、2倍のスピードで充電が完了するという。

 

電気自動車の充電器は一般的な送電網(the grid)から電気をえるため、それは交流電流(alternating current, AC)である。それを電気自動車に充電するときには、直流(direct current)に変換しなければならない。ところが最新の急速充電器は、自動車本体の変換機(converter)をスキップして、直接バッテリーに充電してしまうのだという。

 

 

800Vを最初に採用した電気自動車は、2019年に発売されたポルシェのタイカ(Taycan)である。ポルシェ社によれば、タイカンの巨大な93kWhバッテリーは、たった5分の充電で100kmの走行が可能になるという。

 

韓国のHyundai社およびKia社は今年はじめて、800V車を発表した(2021年8月2日)。そのEV6という電気自動車は77kWhバッテリーを搭載し、18分間で10%から80%にまで充電できる(80%から100%まで充電するには、各社ともずっと時間がかかる。それは急速充電によるバッテリーへの損傷を防ぐためである)。

 

そのほか、GMボルボ、DYD、ステランティスなども、800V電気自動車を開発中である。

 

 

電気自動車を400Vから800Vにアップグレードするのは難しいことではない。バッテリーのセルを直列につなげばいいだけだ。とはいえ、それに付随する電気系統(associated electronics)は、新しく設計し直さなければならない。いまだ400Vの電気自動車が主流なのは、その半導体の入手のしやすさに起因している(800V用の半導体はすぐには集められない)。

 

現在、電気自動車の販売はきわめて好調であるため、800V車用の半導体の開発もすすんでいる。100%シリコン製よりも強度のある、炭化ケイ素(Silicon carbide)製のチップが用いられるようになった。安全面での改善も必要だ。自動遮断器(automated circuit breaker)はバッテリーと離しておかないと、事故の際には危険である。

 

 

800Vの電気自動車が普及していけば、バッテリー問題も改善されていくだろう。充電ステーションがすぐに見つかり、その充電がコーヒーを飲むあいだに完了するようになってようやく、「走行距離恐怖症(the malady of range anxiety)」は癒やされることになるだろう。