アメリカの大旱魃 Aug 2021
The Economist, Aug 21st 2021
メガ・ドライ(大旱魃)
Marc Reisnerはこう記した。
「アメリカ西部において、天候は究極の決定者(the ultimate arbiter)である」と(1986 “Cadillac Desert”)。
“WEATHER WAS the ultimate arbiter in the American West”
ミード湖(Lake Mead, ネバダ州)はアメリカ最大の人造湖であるが、1930年代に建設されて以来、最低の水位にある。8月16日、ミード湖の位置するコロラド川に初めて水不足(Water shortage)が宣言された。ロッキー山脈とシエラネバダ山脈の氷雪は溶けだし、乾燥した森林には山火事の危険が高まっている。
山がちな地形でありながら、3つの砂漠がせめぎあうアメリカ西部は、もともと干魃の常襲地帯である。しかしながら、この千年来の干魃(the Millennium Draught)は、過去のものとは明らかに異なる。干魃というものは、一定の乾燥期間を意味し、いずれは終わりがくるものである。しかし、今回の2度にわたる干魃はまだ続いている。
アメリカ南西部の人口は、国内で最も増えているが、とりわけフェニックスが増えている。しかし、フェニックスの年間降水量は18cmにすぎない。水道料金を値上げするしかないだろう。アメリカ西部において水よりも貴重なものは存在しない。水道料金が安いことによって節水する気がおこらない。
時代遅れの水利権(water rights)も問題だ。コロラド川の水は4千万人に利用されているが、その70%が農業用水として使用されている。農家の水利権というものは、使わなければ失われてしまう(use it or lose it)。つまり節水することは自らの首をしめることになる。
ミード湖の水位低下にともない、新たなダムや用水路の建設が計画されているが、そもそも水の使用量を減らすことが優先課題であろう。ラスベガスでは2002年に比べ水の消費量が47%削減されている。